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地震発生! クロサイ逃走!――上野動物園の猛獣脱出対策訓練に密着してみた

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 もしも東日本大震災のような大きな地震が発生して、猛獣が動物園のおりから脱走してしまったら――。恩賜上野動物園(東京都台東区)で2月8日、地震で崩れたおりからクロサイが逃げたことを想定した訓練が実施された。

 来場者が見守るなか、張りぼてのクロサイを追いかける職員たち。おおっと1人が負傷したぞ。大丈夫か! なおも暴れるクロサイ。早く、早く麻酔銃を……! とまあこんな感じで真剣に繰り広げられる訓練の模様をお届けしよう。

●ほのぼのした昼下がりが一転……

 逃走する動物を捕獲し、来場者を安全な場所へ誘導させる「猛獣脱出対策訓練」は、多摩動物公園と毎年交互に行なっている。今回は12回目。上野警察署と上野消防署の協力のもと実施された。舞台は動物園の西園。お昼時でほのぼのした雰囲気が漂う。100人ほど入る食堂は満席だ。

 20人近い取材陣が位置につき、カメラを構える。しばらく待っていると、飼育員用の扉の向こうに灰色の影が見えた。あれがクロサイか……? のそのそと動き始める灰色の物体。それに合わせて園内アナウンスが流れた。「クロサイが1頭おりから逃げ出しました」。な、なんだってー!

 静まる園内。目の前に張りぼてのクロサイが現れた。実はこれ、職員が1カ月かけて手作りしたもの。中に職員2人が入り、それぞれが前足と後ろ足となって移動させる。もちろんサイズは実物大(体長約3メートル、高さ約180センチ)。まつげが生えていたり、シワが描かれていたりするところは割とリアルか。

 それにしてもクロサイの動きがぎこちない。中の人の呼吸が合っていないのだろうか。報道陣に微妙な空気が流れ、記者も少し笑いそうになってしまった。だがぐっと我慢。なんとか気持ちを切り替える。だってここは真剣な訓練の場なのだ。

 クロサイが園内をふらつき始め、あろうことか来場者のいる広場の方へ向かってしまった。絶対に通すまいと10人ほどの職員が白い網を広げ、遮断。だがクロサイはなおも突進し、網の突破を試みる。これはピンチだ。職員は太い竹の棒で応戦。クロサイはひるんで方向転換。おい、どこへ向かうんだ……。

 クロサイがたどりついたのはシマウマのおりの前だった。シマウマ(本物)は野生の感で身の危険を感じたのか、クロサイを見るやいなやおりの中をグルグル走り回る。かなりパニックになっているようだ。そりゃあ突然でかい張りぼてが現れたらびっくりするよな……。

 クロサイは1歩1歩ゆっくりとおりの前を通り過ぎる。そんなクロサイを至近距離で捉えようと、記者は意を決して前へ。するとなぜかこちらを向いてカメラ目線で少し立ち止まってくれた。サービス精神旺盛なできる子じゃないか……などと思いつつ、引き続きクロサイを追う。

 その先にはまたしても職員がバリケードを張っていた。突破を試みるクロサイ。真剣な眼差しで対峙する職員たち。そのとき1人が体当たりを受けて倒れてしまった。遮断網は崩壊してしまい、クロサイが通り抜ける。倒れた職員はピクリとも動かない。だ、大丈夫か?

 なんと職員は「心臓震盪(しんとう)」で重体(という設定)だった。駆けつけた救護班に担架で運ばれ、すぐにAED(自動体外式除細動器)で応急処置を施された。素早い対応により、どうにか命は取り留められたようだ。ふぅ。良かった。はっ! そういえばクロサイは……?

●いよいよ捕獲へ

 すでに脱走から30分が経過。記者が知らないうちに来場者2人も突進を受けて重傷を負ったようだ。ここで再び園内アナウンスが流れる。クロサイは、来場者が避難しているはずの「フラミンゴ前の広場へと移動」したらしい。やばい。早く捕獲しなければ、もっと多くの負傷者が出てしまう。

 広場には訓練を聞きつけた多くの来場者が詰めかけていた。そこへクロサイが現れる。「あれがサイ!?」とどっと笑いが起こり、来場者は携帯電話で写真を撮ったりしている。だが警備員は至って真面目。「来場者のみなさんは危ないですから館内へ入ってください! ここから離れてください!」と誘導している。なんとも心強い。

 クロサイはのそのそした動きで、広場を歩いては止まりを繰り返す。そうこうしている間に30〜40人ほどの職員によって、遮断網で四方を囲まれた。もう逃げ場はない。タイミングよく「捕獲班」と「麻酔班」の車が1台ずつ広場へ侵入。そして麻酔班の車の助手席から麻酔銃を発射!!!!

 と見せかけて今回は訓練なので実際に針は発射されず、「プシュ!」と効果音が流れた。少し遅れてクロサイからも「ブシュ!」と鈍い音が鳴り、お尻から麻酔の針がニョキッと生えてきたぞ。ちょっとやり過ぎ(?)な演出に報道陣は笑いをこらえ切れなくなり、声が漏れる。

 麻酔を打たれたクロサイはというと、辺りを少しフラフラした後、動きがだんだん鈍くなり、直立不動状態に。麻酔が効いた……か? 捕獲班が車を降り、クロサイの元へ。麻酔の効果を確認すると、両腕で大きく丸の文字を作った。そして捕獲班総出で網をかける。「捕獲が完了しました」とのアナウンスが入り、遮断網を作っていた職員らは片付けを始めた。ふぅ、これにて一件落着!

●「立派に順調にやれた」と土居園長

 訓練後、土居利光園長(61)からは「この訓練を心の中に入れ込んで、また改めて業務に取り組んでください。連絡など立派に順調にやれたと思います」と労いの言葉が職員に贈られた。訓練に協力した上野警察署の代表者も「大変動きが良くて安心しました」と職員を称えた。

 報道陣に対し、土居園長は「実際サイはああいう形では動き回らないし、パニックになるときっと動かないと思うが、訓練ということなので負傷者の対応や捕獲など色んな要素を組み込みながら行った」と訓練の目的を説明した。

 おりは地震に備えて頑丈に作ってあり、木が倒れかかって逃走経路ができてしまうといった万が一のことが無い限り、動物は逃げ出させないという。そのうえ動物は「パニックになると始めは動かないので、その間に対処する」と、土居園長は力強くコメントした。

 過去には、クロヒョウ(1936年)やインドゾウ(1967年、1977年)、ニホンザル(2010年)が実際に逃げてしまったことがある同園。以前の訓練では着ぐるみを使って動物を演じたが、着ぐるみは「なんかかわいい感じになってイベントっぽくなる」(土居園長)ため、今回は避けたという。

 クロサイの張りぼては大変重いため、中に入る人には「なるべく頑丈そうな職員」が選ばれた。その1人は「あくまで訓練なので笑いがあってはいけないので真剣に、職員を傷つけるぞ」という意気込みで取り組んだと、疲れた表情でコメントしてくれた。途中で少し笑ってしまった記者は自分の真剣度が足りなかったと反省。いやあ、本当にお疲れ様でした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120208-00000099-it_nlab-sci
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